EASY Forensics 導入事例

事業内容

「アマギグループ」イメージ

「アマギグループ」小川一弘社長インタビュー

株式会社アマギ

従業員数: 130名

所在地: 神奈川県

アマギグループは1970年より自動車整備、自動車販売、自動車鈑金、保険事業を通じてお客様に「安全」「安心」「信頼」のサービスを提供しています。創業から受け継がれてきた技術を活かし、「お客様に喜びを提供できるよう人間性を高めること」に努め、サービス業としての価値を高めています。

導入の背景と課題

  • ガバナンスとコンプライアンス(「ブレーキ」)を利益(「アクセル」)とバランスさせる必要性があった
  • 自動車整備業界は国土交通省の許認可が必要で法律に基づいた運営が求められる
  • 人間のミスを隠さずに報告する文化が必要だった

選定理由

  • 暗黙知を可視化してチェックするツールが必要だった
  • 人間の間違いや勘違いに対処するため
  • 「嘘がつけない仕組み」を作るため

導入後の成果

  • ガバナンス意識をチェックするタイミングの必要性に気づいた
  • PDCAのC(チェック)の重要性を再認識した

創業から受け継がれてきた技術を活かし、「お客様に喜びを」という理念を掲げるアマギグループ。トラックのディーゼル車をEV車に転換するなど、10年・20年・30年先の社会変化を見据えた事業にも注力する企業です。

2代目社長の小川一弘氏は、自動車整備業界におけるガバナンス強化の取り組みを積極的に発信しています。そこにはどのような思いが込められているのか、お話を伺いました。注力する企業です。

アマギグループのはじまりと、小川さんの幼少期からの思い

——はじめに、アマギグループの今までの歩みについてお話を聞かせていただけますか。

小川一弘社長(以下、小川さんと記載):創業者である僕の父は、「天城越え」で有名な天城峠がある静岡県伊東市の出身です。それで、会社名を「アマギ」と名付けました。

父はトラックの整備士として勤めていた工場を脱サラしたので、元々は完全なる職人。僕が生まれて、このままでは食べていけないということで会社を興したと聞いています。そうした背景があって、僕もこの業界に入りました。

僕の中で一番のベースにあるのが、小学校のときの記憶です。2つ年下の妹が幼稚園生だったので、毎朝バスが迎えに来るのですが、その待合所がうちの工場の前だったんです。当時この辺りのエリアは、都内に通う会社員の方が家を建て始めていたので、スーツを着たサラリーマンのご家庭で生まれたお子さんと一緒に幼稚園のバスに乗るわけです。

あるとき妹が、ツナギを着て来た父に「恥ずかしいから声をかけないで」と言っていたのを聞いて、なんだか悲しかったんですよね。住んでいたアパートの目の前にある工場で、遅くまで父が働いている姿をずっと見ているはずなのに。こんなに頑張っているのに、職人の社会的地位が低いことを実感してしまいました。これは今でもそうで、それを何とか変えていきたい、社会に認められる職業になってほしい、というのが実は僕の根底にある思いです。

とはいえ、社会的地位を低くしてしまったのは職人側にも問題があると僕は思っています。「職人気質」という言葉もありますが、自分の価値観が全てなんですよね。お客様ではなく自分自身が納得する仕事をして対価をいただくような考え方なので、お客様の声を聞くマインドが十分ではありません。それを変えていきたいです。

変えなければ、と思った業界の現状

——実際に自動車の整備業界に入られてからは、いかがでしたか。

小川さん:大学を卒業して僕が最初に就職したのが、トラックのディーラーです。当時のことを今でも覚えていますが、今月の目標に「遅刻しない」と掲げられていて愕然としました。お客様目線ではない問題は、やはりディーラーの会社でも同じでした。

それでもスタッフと一緒に汗をかきながらやってきましたが、それだけでは業界は変わらない。27歳でアマギグループの会社に入ってから12年後、「社長をやらせてほしい」と言って39歳で社長に就任しました。父には自分がこうしたいとあまり伝えるタイプではなかったので、驚かれましたね。

なぜかと言うと、この会社やこの業界を変えなきゃ、という強い思いがあったからです。このままでいても変わらないなと。父は現場上がりだから、一生懸命やっているんだけどもお客様を見ていない。そこを変えていかないと、この事業自体が成長しないばかりか、事業の継続さえもこの先おそらく難しくなってくると危機感を抱いたのです。実際に自動車整備工場の廃業は直近で過去最高の数字となり、おそらくここからもっと加速します。

結局、時代の変化についていけていないんですよね。自分がやっていることが正しいのではなくて、お客様の要望に応えていくのが事業のベースであるはずなので、それができないところはこれから淘汰されるだろうと僕は思っています。

最も大切にしているのは、ガバナンスとコンプライアンス

小川さん:僕は、事業においてガバナンスとコンプライアンスが不可欠だと思っています。

車でいうと、利益を上げるのはアクセルで、ガバナンスとコンプライアンスはブレーキです。車は両方が備わっていないと事故を起こしますから、この2つのバランスが大切です。そこに取り組まないと企業は長く続かない。昨今、利益だけを追い求めて大問題が露呈した同業者の事件もありましたよね。

映画『七つの会議』にもあるように、不正やミスはなくならないものです。けれども、短期間では結果がでなかったとしても、なくそうと言い続けることでそれらは少なくなるかもしれません。

自動車整備業界は国土交通省から許認可をいただいているので、法律に基づいた運営が求められます。しかし、人間ですから当然ミスもあるわけです。そんなときには、隠さずに国土交通省に報告をしてほしいと僕は必ず伝えています。その姿は絶対に社員が見ていますから。僕が仮に「もみ消せ」と言ったら、そうしていいんだって思われますよね。そういう小さな綻びが最終的には大きな問題になりかねないし、事業の規模が大きくなればなるほど会社の姿勢が問われます。

——これを瞬時にできるかどうかは企業の体制にもよりますが、トップの方ほどできていないことも少なくありませんよね。

小川さん:管理者にも全く同じことを伝えています。難しいことを考えなくていい、間違ったら素直に「ごめんなさい」と言って、嘘はつくなとね。小学校で教わったことができたら、リーダーはできるからと。

社長の思いを浸透させる、アマギ流の報告ルール

——こうした社長の思いを、社員に日々伝える工夫は何かあるのでしょうか。

小川さん:管理者を集めた会議を毎月開くのですが、ここでは報告のルールを設けています。

まずは、会社の利益のために実績報告をすること。次にお客様の声と競合他社の情報、業界の情報、最後に自分の考えの順で報告するように指導しています。特に時間をかけているのが、実績以外のところ。実績は見ればわかりますから。実績を上げるためには、お客様の声と市場の把握が大事です。市場にはお客様と競合しかいないから、その情報を報告してほしい。

例えば営業スキルを磨けとか、もちろんそれも大事ですが、何のためにそうするかはお客様にとって有益な情報を持っていると知らせるためですよね。アマギの企業理念は、第一に「お客様に喜びを」を掲げています。お客様が喜ぶような情報を提供するのが営業担当として一番大事なはずであって、売上のためにやっているのではない、というような調子で話をします。

社長の思いを浸透させる、アマギ流のカレンダールール

——社内では各個人のカレンダーがオープンになっているんですね。

小川さん:スケジュールをオープンするのには、いろいろな意味があります。

まず信頼関係。社長がいつどこで何をしているかわからない状態で何を言ったとしても、誰も言うことを聞きません。だから、社員の誰でも僕のスケジュールが見られるようにしました。新入社員の方でも、空き予定を確認して僕とのミーティング予定を入れられます。

それともう一つ、スケジュールを共有して稼働率を上げるのも僕らの重要なファクターですよ。例えば営業担当が外で依頼を受けたときに、スケジュールの空き状況を見ればすぐに予定を入れられる。この状況を作るには1年ぐらいかかりました。

——ここまでできるのは強固な信頼関係があってこそ。すごい習慣だなと思いました。

小川さん:実はそんなに難しくなくて、自分の考え方を変えるだけです。これは僕が後継者だからこそ気づいたことです。

創業者から引き継ぐときって、信頼関係を結ぶのを一番大事にしなきゃいけない。それを築き上げるためにいろいろな試行錯誤をして、他人と過去は変えられないけど自分と未来は変えられると気づいたんです。よく言われる話ですが、自分が変わるしかない。

——メンタルモデルや考え方を変えるのは、言うは易しで難しいですよね。

小川さん:僕は変わらなきゃと思ったのが正直なところです。このままじゃ自分は駄目だろうなと。知識面でもそうで、学生時代よりも今のほうが本を読みますね。

EASY Forensicsを導入した目的

——ツールを使わずとも既にガバナンス面の統制ができていると感じましたが、その上でなぜEasy Forensicの導入を決めたのでしょうか。

小川さん:道具が必要だと思ったんです。言葉とかコミュニケーションとかで、何となくできているものを可視化したい。人間には間違いや勘違いがありますし、追い込まれると嘘をつくことだってあるものです。だから、嘘がつけない仕組みを作るべきだし、会社としてやるべきことはやる姿勢が大事だなと。

——ツールを使ってガバナンスを守るわけではなくて、暗黙知を可視化してチェックしていくツールとして利用するということですね。導入にあたって何か感じたことはありますか。

小川さん:やっぱり、ガバナンス意識をチェックするタイミングが必要かなと改めて思いました。今まではそれを明確に決めていなかったので、PDCAのCが課題ですね。

インタビューを終えて

小川さんの思いの軸と、業界を変えていきたい意志は一貫していると感じました。この姿勢は、現在の社会的インフラや地域共創への思いにも通じています。

小川さんの名刺には、「代表取締役 兼 社長執行役員」と書かれていました。代表取締役の役割は、経営全般で利益を上げること。一方で執行役員は、業務を執行する責任者。自分でやると決めたことを、執行していく責任もしっかり担うという宣言に他ならないものです。

そしてこれは、まさに“アクセル”と“ブレーキ”の両方を担う覚悟を強く感じました。

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